多発性硬化症(ストーリー vol.3)

当たり前だったことが、今では大きな幸せ

「治らんのとちゃうか?」
「こんな病気のまま、生きてくんは辛過ぎる」

難病だと宣告されて、マイナスな感情が次々にでてきた時期もありました。
でも、治った人がいることを知ってからは考えが変わりました。

戸田さんとの出会いは、自分自身を見直す大きなきっかけになりました。
このきっかけがなければ、どうなっていたかと考えると恐ろしいくらいです。
治った人の存在は、自分に大きな希望を与えてくれました。

「元気でいれる自分が嬉しい」
闘病中の方の希望につながればと、自分の闘病談をお伝えしたいと思います。

発病するまでは、”健康”ということを気にせずに過ごしてきてたんだと思います。
それどころか、健康的だと思い込み、不健康に気づこうとしなかったのです。

夕食は高齢の母が作る煮豆や煮物など、いわゆる健康的と思われる食事でした。
少し気になるとサプリメントをとったりもしていました。
しかし、朝や昼はコンビニのパンや弁当、外食ばかりだったのです。
「夜は体に優しいものを食べているから大丈夫」
そんな風に思い込んでいたのです。

ドライバーという職業を選んだのは、人との接触が少ないからでした。
人の無神経さや理不尽なことなどに我慢できない短気なところがあったからです。
ところが、チームリーダーというドライバー達を取りまとめる役割が与えられたのです。

ストレスが増えていき、もともと好きな甘いお菓子を食べることが増えました。
チームとしての責任から、朝は4時から働きだし、1日の勤務時間が15時間ということも週に何度もありました。
「食事の乱れ」と「大きなストレス」を漠然と感じながらも、発病につながるとは思ってもいませんでした。

身体の疲労に続いて、あちこちに痺れやめまいなどの症状が増えていきました。
病院を受診してみると、「多発性硬化症」と診断され、即入院となりました。
「多発する?」「硬化する?」、聞いたこともない病名は悪いイメージしかわきません。

免疫抑制剤という免疫を抑える薬を飲まなければならない。
一生、薬を飲み続けることにも強い抵抗を感じました。
ネットで検索すると治らない病気という情報もたくさん出てきました。

生きることに絶望を感じたり、薬を受け入れようと考えたり、心は葛藤し、不安定になっていきました。
「仕事は続けられるのか?」「親孝行のつもりで注文した家はどうする?」
色々な想いや考えが巡り、開き直って出した答えは「病気を治そう」でした。

そしてたどり着いたのが難病克服支援センターでした。
治った人はいる、自分もその道を辿れば治るかも。。。
それからはマイナスなことに背を向け、体に良い情報だけを集めることにしました。
食事改善で体に良い物を摂り、七葉純茶や散歩、運動も始めました。

4日に1回とかなりの便秘症だったので、便の記録をつけ始めました。
週末に気が緩むと出たり、食物で色や形が変わったり、便で健康状態がわかるようになってきました。
自律神経も整いはじめ、毎日便が出ることで回復の兆しを感じました。

同時に心の断捨離もしました。
理不尽さを感じながらも言い辛かったことを、自分の常識基準で素直に伝えていきました。
職場ではリーダーの立場としてではなく、同じ仕事をする人間として正直な気持ちで話しました。
減薬のことで大きく衝突した医師にも、精神的に不安定だった頃に良くない態度をとったことを謝りました。
元気になったら好きなことをしようと、自分の好きなことを改めて考えてもみました。

「これだけやって治らないことはない」
そんな自信が迷わずに進み続けられたことにつながったのだと思います。
もちろん、良くなっていく体の変化も気持ちを後押しをしてくれました。

ハードな仕事をこなしながら、親のためにと建てた家も完成させました。
昔好きだったバイクに乗って、ツーリングも始めました。
ドラマーとして仲間とのバンド活動も再開しました。
そして2020年に断薬し、同年12月に難病克服支援センターで卒業式を行っていただきました。

 

自由に体が動き、元気でいられることを今更ながら嬉しく感じます。
以前は当たり前だったことが、今では大きな幸せに変わっているのです。
苦しいことを経験したから味わえる幸せ、それを取り戻したからこそ、これからは自分を大切にしようと思います。

そして、最後に、闘病中の人たちに是非伝えたいことがあります。
高齢の親に心配かけたくなくて普通を装い、ハードな仕事も休まず、それでも健康な身体を取り戻せた僕から伝えたいメッセージです。

「みんな、絶対あきらめんと希望をもって頑張って欲しい!!」

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